はじめてお料理をお客様に出したとき。
それは、不思議な気持ちだった。
見知らぬ人が私の作ったお料理を食べている。
今でも知らないお客様がナイフを運んでいたときの顔をはっきりと覚えているほどである。
そして、現実の厳しさを痛感するのには、さほど時間もかからなかった。
私がはっきりと覚えている顔のお客様にはもう一度会うことはなかった。
一か月店を開けて、私はすぐにお店を閉めてギリシャに一か月行ってしまった。
ギリシャに戻りたかった・・・。
また、日本に戻り、二か月が過ぎ、三か月が過ぎたころ、一回だけ言った言葉がある。
「やめたい・・・」
と・・・。
幸か不幸かそれは叶わず、パルテノンを続けた。
一年目はとても長く。
二年目は慣れないフィリピンの女の子たちと衣食住をともに働き。
三年目がたったころ、気がつくと何回もお会いする顔が増えているのに気がついた。
カランとパルテノンの小さなドアを開けるお客様の顔で
「あっ…チキンがない・・・」
と心の中でつぶやく。
4年目はあっという間に過ぎ・・・。
今年の4月末で5年目を迎える。
「5年やっちゃたぁー」
照れ隠すように無邪気に言うと、半呼吸空気が止まり
「danae5年やったんだねー」
「うちの旦那は一年もたないって言ってたんだよ」
「えらい、えらい、よくやった」
子供に戻ったような感覚におちいる。
「こんな状態のまま、終わるのは嫌だ」
2年目くらいがそんな気持ちの感情が強かった。
3年を過ぎ
「次は5年だね」
と言われた時は
「エー無理、無理」
と笑った。
今はもう2年目に抱いた感情はない。
5年目がわたしの区切りとなる。
「5年になるんです、みんなでお食事したいんです。そして、それを区切りとして、ゆっくりやっていきます」
私の宣言(^^
「そうだよ、もういいよ、ゆっくりやりなって、だってもう常連さんじゃない、まぁはじめての人が来たら驚くかもしれないけどね、私は自分の居間と思ってきてるからいいけど」
うれしい・・・。
これがしたかった・・・。
家の居間。
ようこそ、わたしとあなたの乱雑な小さい居間へ。
しょっちゅう、物を取りに外へでて皆さんを一人にさせるけど・・・。
「いませんよ、すぐに帰ってきます」
と伝言を言ってムサカを食べていてくれるけど・・・。
3組以上は今でもできないから8時でも看板をCloseにしちゃうけど・・・。
注文を取っているのはお客様だけど・・・。
お皿を片づけるのもお客様だけど・・・。
営業時間はあってないようなものだけど・・・。
こんな、私をそれでもゆるゆるやってよいと言ってくださる心の広い皆様。
お食事会楽しみにしています。
ゆるゆると今お誘いしています。
メールも電話も知りません。
今日はこんなことをお話してくださった方がいらっしゃいました。
「私はここに来るのが楽しみなんです、いつも時間に追われていて、ここにくると時間の流れが違うんですよ。おいしく料理を食べて、近くに外国の人がしゃべっていて、でも干渉はされなくて、不思議ですねぇ、その日は気持ちよく眠れるんです」
私の区切り。
ゆっくり、ゆるゆる皆さんと付き合っていくつもりである。
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